モカといふもの
茂加さん、というひとが出てくるのはなんというタイトルの漫画だったろう。
その漫画を読んだ小学生のころから、モカという名前の飲み物があると知ってはいた。知っていたけれど、実際に口にしたことはいままでなかった。
チョコレートとコーヒー? 味が想像できないから、やめておこう。
茂加さんって名前はすきだけれど、モカをすきになれるとは限らないし。
当時はそんなふうに思っていたし、そのあと長い間、モカと茂加さんのことを思い出すこともなかった。
そうして不意に、初めてを迎える時は来る。それが今日。
モカは、甘い。甘いのに、苦い。苦いけれど、甘い。
甘い、と、苦い、の永続するループ。
えええ。モカっておいしい!
モカを堪能してから、そういえば、と茂加さんのことを思い出した。
茂加さん、わたし今日やっとモカを飲んだよ。おいしかったよ。
ことばだけで知っていたものを体験するってすごいことだね。
いまなら茂加さんのお話も違ったふうに読めるのかな。また読みたいな。
ちいさくちいさく、未知を切り拓いた、今日のわたし、今日の、モカ。